スパニングツリーの設定手順

スパニンググリーの基本的な設定はとてもシンプルで次の2つの手順です。

  1. スパニングツリーの有効化
  2. ルートブリッジの決定

手順はシンプルですが、設定を行う前にイーサネットフレームの転送経路をどのように決めるかをきちんと考えておかなければいけません。

ルートブリッジを中心として同一ネットワーク(VLAN)内のイーサネットフレームの転送を行います。スパニングツリーで決める転送経路は、同一ネットワーク(VLAN)内なのでレイヤ2のレベルです。レイヤ2のレベルでの転送経路を決めるときには、まずレイヤ3レベルでの転送経路を考えます。PCなどからサーバへ何らかの通信を行うとき、サーバは異なるネットワークに接続されていることがほとんどです。そのため、まずはデフォルトゲートウェイへデータを転送します。これがレイヤ3レベルでの転送経路です。

レイヤ3レベルとレイヤ2レベルの転送経路を一致させる、すなわち、デフォルトゲートウェイの方向とルートブリッジの方向が同じになるようにします。

次の図の簡単なネットワーク構成で考えてみましょう。SW1、SW2、SW3が同一VLANでループ構成となっています。

図 レイヤ2の転送経路とレイヤ3の転送経路
図 レイヤ2の転送経路とレイヤ3の転送経路

PCのデフォルトゲートウェイがSW2となっているとき、他のネットワークのサーバへ通信するには、まず、SW2へ転送します。そのため、ルートブリッジをSW2とします。するとVLAN内について最短経路でイーサネットフレームを転送できます。

スパニングツリーの有効化

Cisco Catalystスイッチはデフォルトで以下のコマンドが設定されていて、スパニングツリーがすべてのVLANで有効です。

(config)#spanning-tree vlan all

running-config上では、表示されていません。

スパニングツリーの設定手順としてスパニングツリーの有効化を挙げていますが、明示的に設定する必要はありません。

ルートブリッジの決定

ルートブリッジを決めるためには、ブリッジプライオリティを小さくします。ブリッジプライオリティを小さくするには、以下の3通りのコマンドがあります。

ブリッジプライオリティの設定

(config)#spanning-tree vlan <vlan-num> root primary
(config)#spanning-tree vlan <vlan-num> root secondary
(config)#spanning-tree vlan <vlan-num> priority <priority>

spanning-tree vlan root primaryコマンドは、ブリッジプライオリティをデフォルトの32768+VLAN番号から24576+VLAN番号にします。spanning-tree vlan root secondaryコマンドはブリッジプライオリティを28672+VLAN番号とします。spanning-tree vlan  priorityコマンドはブリッジプライオリティを指定した値+VLAN番号にします。ただし、4096の倍数でしか指定できません。

その他にもスパニングツリーのコンバージェンスを高速化するために、タイマの値を変更するコマンドもあります。ただし、コンバージェンスを高速化するのであれば、タイマを変更するよりもRSTPを有効化したほうがよいです。

スパニングツリーの確認

スパニングツリーの確認は、主に次のshowコマンドを利用します。

スパニングツリーの確認コマンド

#show spanning-tree [vlan <vlan-number>]

指定したVLANのスパニングツリーの詳細な状態を表示します。vlan以降を省略すると、すべてのVLANについてのスパニングツリーの詳細な状態を表示します。

ルートブリッジでのshow spanning-treeの例

以下は、ルートブリッジでのshow spanning-treeコマンドの出力です。

SW11#show spanning-tree vlan 1 

VLAN1
  Spanning tree enabled protocol ieee
  Root ID    Priority    4096
             Address     0009.b744.eec1
             This bridge is the root
             Hello Time   2 sec  Max Age 20 sec  Forward Delay 15 sec

  Bridge ID  Priority    4096
             Address     0009.b744.eec1
             Hello Time   2 sec  Max Age 20 sec  Forward Delay 15 sec
             Aging Time 300

Interface        Role Sts Cost      Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Gi1/0/1          Desg FWD  4        128.1    P2p
Gi1/0/7          Desg FWD  4        128.7    P2p
Gi1/0/9          Desg FWD  4        128.9    P2p

ルートブリッジなので、すべてのポートは代表ポート(Desg)でフォワーディング状態です。

ルートブリッジ以外でのshow spanning-treeの例

ルートブリッジ以外のスイッチでのshow spanning-treeの出力例は次のようになります。

SW22#show spanning-tree vlan 1

VLAN0001
  Spanning tree enabled protocol ieee
  Root ID    Priority    4096
             Address     0009.b744.eec1
             Cost         8
             Port         7 (GigbitEthernet1/0/7)
             Hello Time   2 sec  Max Age 20 sec  Forward Delay 15 sec

  Bridge ID  Priority    16385  (priority 16384 sys-id-ext 1)
             Address     0013.6060.6480
             Hello Time   2 sec  Max Age 20 sec  Forward Delay 15 sec
             Aging Time 300

Interface        Role Sts Cost      Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Gi1/0/1          Desg FWD  4        128.1    P2p
Gi1/0/7          Root FWD  4        128.7    P2p
Gi1/0/9          Altn BLK  4        128.9    P2p

ルートブリッジ以外のスイッチには、ただ1つルートポートがあります。また、ブロックされるポートは「Altn」という表示です。Altnは、RSTPの代替ポートのことですが、標準のスパニングツリーの場合でもAltnと表示されています。


以下の記事は、Cisco Catalystスイッチでのスパニングツリーの具体的な設定例です。


レイヤ2スイッチの仕組み