目次
スパニングツリーの設定手順
スパニンググリーの基本的な設定はとてもシンプルで次の2つの手順です。
- スパニングツリーの有効化
- ルートブリッジの決定
手順はシンプルですが、設定を行う前にイーサネットフレームの転送経路をどのように決めるかをきちんと考えておかなければいけません。
ルートブリッジを中心として同一ネットワーク(VLAN)内のイーサネットフレームの転送を行います。スパニングツリーで決める転送経路は、同一ネットワーク(VLAN)内なのでレイヤ2のレベルです。レイヤ2のレベルでの転送経路を決めるときには、まずレイヤ3レベルでの転送経路を考えます。PCなどからサーバへ何らかの通信を行うとき、サーバは異なるネットワークに接続されていることがほとんどです。そのため、まずはデフォルトゲートウェイへデータを転送します。これがレイヤ3レベルでの転送経路です。
レイヤ3レベルとレイヤ2レベルの転送経路を一致させる、すなわち、デフォルトゲートウェイの方向とルートブリッジの方向が同じになるようにします。
次の図の簡単なネットワーク構成で考えてみましょう。SW1、SW2、SW3が同一VLANでループ構成となっています。
PCのデフォルトゲートウェイがSW2となっているとき、他のネットワークのサーバへ通信するには、まず、SW2へ転送します。そのため、ルートブリッジをSW2とします。するとVLAN内について最短経路でイーサネットフレームを転送できます。
スパニングツリーの有効化
Cisco Catalystスイッチはデフォルトで以下のコマンドが設定されていて、スパニングツリーがすべてのVLANで有効です。
(config)#spanning-tree vlan all
スパニングツリーの設定手順としてスパニングツリーの有効化を挙げていますが、明示的に設定する必要はありません。
ルートブリッジの決定
ルートブリッジを決めるためには、ブリッジプライオリティを小さくします。ブリッジプライオリティを小さくするには、以下の3通りのコマンドがあります。
(config)#spanning-tree vlan <vlan-num> root primary
(config)#spanning-tree vlan <vlan-num> root secondary
(config)#spanning-tree vlan <vlan-num> priority <priority>
spanning-tree vlan root primaryコマンドは、ブリッジプライオリティをデフォルトの32768+VLAN番号から24576+VLAN番号にします。spanning-tree vlan root secondaryコマンドはブリッジプライオリティを28672+VLAN番号とします。spanning-tree vlan priorityコマンドはブリッジプライオリティを指定した値+VLAN番号にします。ただし、4096の倍数でしか指定できません。
その他にもスパニングツリーのコンバージェンスを高速化するために、タイマの値を変更するコマンドもあります。ただし、コンバージェンスを高速化するのであれば、タイマを変更するよりもRSTPを有効化したほうがよいです。
スパニングツリーの確認
スパニングツリーの確認は、主に次のshowコマンドを利用します。
#show spanning-tree [vlan <vlan-number>]
指定したVLANのスパニングツリーの詳細な状態を表示します。vlan以降を省略すると、すべてのVLANについてのスパニングツリーの詳細な状態を表示します。
ルートブリッジでのshow spanning-treeの例
以下は、ルートブリッジでのshow spanning-treeコマンドの出力です。
SW11#show spanning-tree vlan 1 VLAN1 Spanning tree enabled protocol ieee Root ID Priority 4096 Address 0009.b744.eec1 This bridge is the root Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec Bridge ID Priority 4096 Address 0009.b744.eec1 Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec Aging Time 300 Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type ---------------- ---- --- --------- -------- -------------------------------- Gi1/0/1 Desg FWD 4 128.1 P2p Gi1/0/7 Desg FWD 4 128.7 P2p Gi1/0/9 Desg FWD 4 128.9 P2p
ルートブリッジなので、すべてのポートは代表ポート(Desg)でフォワーディング状態です。
ルートブリッジ以外でのshow spanning-treeの例
ルートブリッジ以外のスイッチでのshow spanning-treeの出力例は次のようになります。
SW22#show spanning-tree vlan 1 VLAN0001 Spanning tree enabled protocol ieee Root ID Priority 4096 Address 0009.b744.eec1 Cost 8 Port 7 (GigbitEthernet1/0/7) Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec Bridge ID Priority 16385 (priority 16384 sys-id-ext 1) Address 0013.6060.6480 Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec Aging Time 300 Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type ---------------- ---- --- --------- -------- -------------------------------- Gi1/0/1 Desg FWD 4 128.1 P2p Gi1/0/7 Root FWD 4 128.7 P2p Gi1/0/9 Altn BLK 4 128.9 P2p
ルートブリッジ以外のスイッチには、ただ1つルートポートがあります。また、ブロックされるポートは「Altn」という表示です。Altnは、RSTPの代替ポートのことですが、標準のスパニングツリーの場合でもAltnと表示されています。
以下の記事は、Cisco Catalystスイッチでのスパニングツリーの具体的な設定例です。
レイヤ2スイッチの仕組み
- レイヤ2スイッチの概要 ~ひとつのネットワークを作る~
- レイヤ2スイッチの動作 ~MACアドレスに基づいて転送~
- 演習:レイヤ2スイッチの動作[Cisco]
- コリジョンドメインとブロードキャストドメイン
- レイヤ2スイッチの転送方式
- 全二重通信 ~送信も受信も同時に~
- オートネゴシエーション ~両端のポートの一番いい速度/モードにする~
- Cisco 全二重/半二重の不一致(duplex mismatch)
- ポートセキュリティ ~つながっているPCは正規のPCですか?~
- Cisco ポートセキュリティの設定
- Ciscoポートセキュリティの設定例
- SPAN ~ネットワークのモニタリング~
- スパニングツリーの概要 ~イーサネットフレームの転送経路を冗長化~
- BPDU ~スパニングツリーの制御情報~
- スパニングツリーの仕組み ~ルートブリッジを中心とした転送経路を決める~
- スパニングツリー ポートIDでルートポートが決まるとき
- スパニングツリーのポートの状態 ~ブロッキング/リスニング/ラーニング/フォワーディング~
- TCN BPDUによるトポロジ変更通知
- PVST ~VLANごとにスパニングツリーを考える~
- スパニングツリー(PVST)の設定と確認
- PortFast ~すぐにフォワーディング状態にする~
- スパニングツリーの設定例
- RSTP ~高速なスパニングツリー~
- RSTPの設定例
- ルートガード
- BPDUガード/BPDUフィルタ
- PoE ~UTPケーブルで電源供給~
- イーサチャネルの概要 ~複数のイーサネットリンクをまとめる~
- イーサチャネルの負荷分散 ~単純に帯域幅が増えるわけではない~
- L2イーサチャネルの設定 ~スイッチポートをまとめる~
- L3イーサチャネル ~ルーテッドポートをまとめる~
- イーサチャネルの設定例 L3イーサチャネルとL2イーサチャネルの接続
- LACP/PAgPのshowコマンド
- [Juniper-Cisco相互接続] L2リンクアグリゲーションの設定例
- [Juniper-Cisco相互接続] L3リンクアグリゲーションの設定例
- ストームコントロール