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レイヤ2スイッチの役割
レイヤ2スイッチ(スイッチングハブ)は「ひとつの」イーサネットを利用したネットワークを構成するネットワーク機器です。レイヤ2スイッチを複数台接続しても、「ひとつの」ネットワークです。
そして、レイヤ2スイッチで構成する「ひとつの」イーサネットネットワーク内でのデータの転送を行います。レイヤ2スイッチにとってのデータは「イーサネットフレーム」です。イーサネットはOSI参照モデルで考えると第2層のデータリンク層です。OSI参照モデルの第2層のイーサネットフレームを扱うので、「レイヤ2」スイッチと呼んでいます。イーサネットフレームを転送するために、イーサネットヘッダのMACアドレスをチェックします。転送する際には、FCSでエラーチェックも行っています。
企業の社内ネットワークであるLANや一般個人の家庭内ネットワークは、イーサネットを利用して構築することがほとんどです。そのため、レイヤ2スイッチは社内ネットワークのLANや家庭内ネットワークを作るためのネットワーク機器といえます。
レイヤ2スイッチには、以下の製品写真(Cisco Catalyst1000シリーズ)のようにたくさんのイーサネットインタフェース(LANポート)が搭載されています。製品によって、インタフェースの数はさまざまです。大規模向けの製品であれば数百以上もの多くのイーサネットインタフェースを搭載しています。個人ユーザ向けのレイヤ2スイッチ(スイッチングハブ)であれば4ポートや8ポート程度の製品もたくさんあります。
まずレイヤ2スイッチに接続
レイヤ2スイッチは「ネットワークの入口」という役割もあります。レイヤ2スイッチにはたくさんのイーサネットインタフェースが備わっていて、クライアントPCやサーバなどをネットワークに接続するときには、まず、レイヤ2スイッチと接続することになります。ネットワークの入口になるという意味から、レイヤ2スイッチを「アクセススイッチ」と表現することもよくあります。
呼び方がいろいろ
レイヤ2スイッチには呼び方がいろいろあります。このことが「ネットワーク機器ってなんだかいっぱい種類があってよくわからない」なんて思ってしまい、混乱してしまう原因にもなっています。レイヤ2スイッチの主な呼び方は以下の通りです。
- レイヤ2スイッチ(L2スイッチ)
- スイッチ
- LANスイッチ
- スイッチングハブ
- ハブ
これらは、全部同じモノを表しています。家電量販店で販売されている一般ユーザ向けのレイヤ2スイッチは「スイッチングハブ」と呼ぶことが多いです。そして、スイッチングハブを省略して、単に「ハブ」と呼ばれることもしばしばです。
ハブとレイヤ2スイッチは違う
筆者個人は、単に「ハブ」という呼び方は、使うべきではないと考えています。単に「ハブ」という呼び方を使った場合、OSI参照モデルの物理層レベルの「共有ハブ(シェアードハブ)」との区別がつかなくなってしまうからです。
「ハブ」も「レイヤ2スイッチ」も用途は、「ひとつのイーサネットネットワークを作る」ことで共通です。ただ、転送対象と転送の仕組みが違います。
ハブは、「データ(イーサネットフレーム)」を受信して転送するのではありません。OSI参照モデルの物理層レベルのネットワーク機器なので、「物理信号」を転送するだけです。インタフェースで物理信号を受信しても、それを「0」「1」のデータに変換しません。物理信号のノイズを取り除いて、受信したインタフェース以外のすべてのインタフェースへコピーして送り出すだけです。このときに、何らかの転送の判断も一切行っていません。特に何も判断せずにすべてのインタフェースに送り出すという単純な動作をしているだけです。
あるPCから送信されたデータ(物理信号)は、同じハブにつながっているすべてのPCに流れていってしまいます。ちょうど、初期のバス型のイーサネット規格である10BASE5や10BASE2を利用しているのと同じです。
ハブを使ってネットワークを構築することは、たぶん、もうないでしょう。誰かが単に「ハブ」と言った場合は、その人は「レイヤ2スイッチ」を意図していることがほとんどです。でも、この記事を読んでくださっているあなたは、きちんと言葉を使い分けてください。
レイヤ2スイッチの仕組み
- レイヤ2スイッチの概要 ~ひとつのネットワークを作る~
- レイヤ2スイッチの動作 ~MACアドレスに基づいて転送~
- 演習:レイヤ2スイッチの動作[Cisco]
- コリジョンドメインとブロードキャストドメイン
- レイヤ2スイッチの転送方式
- 全二重通信 ~送信も受信も同時に~
- オートネゴシエーション ~両端のポートの一番いい速度/モードにする~
- Cisco 全二重/半二重の不一致(duplex mismatch)
- ポートセキュリティ ~つながっているPCは正規のPCですか?~
- Cisco ポートセキュリティの設定
- Ciscoポートセキュリティの設定例
- SPAN ~ネットワークのモニタリング~
- スパニングツリーの概要 ~イーサネットフレームの転送経路を冗長化~
- BPDU ~スパニングツリーの制御情報~
- スパニングツリーの仕組み ~ルートブリッジを中心とした転送経路を決める~
- スパニングツリー ポートIDでルートポートが決まるとき
- スパニングツリーのポートの状態 ~ブロッキング/リスニング/ラーニング/フォワーディング~
- TCN BPDUによるトポロジ変更通知
- PVST ~VLANごとにスパニングツリーを考える~
- スパニングツリー(PVST)の設定と確認
- PortFast ~すぐにフォワーディング状態にする~
- スパニングツリーの設定例
- RSTP ~高速なスパニングツリー~
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- ルートガード
- BPDUガード/BPDUフィルタ
- PoE ~UTPケーブルで電源供給~
- イーサチャネルの概要 ~複数のイーサネットリンクをまとめる~
- イーサチャネルの負荷分散 ~単純に帯域幅が増えるわけではない~
- L2イーサチャネルの設定 ~スイッチポートをまとめる~
- L3イーサチャネル ~ルーテッドポートをまとめる~
- イーサチャネルの設定例 L3イーサチャネルとL2イーサチャネルの接続
- LACP/PAgPのshowコマンド
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