イーサチャネル(EtherChannel)とは

イーサチャネル(EtherChannel)とは、複数のイーサネットリンクを仮想的に1つにまとめることです。イーサチャネルを利用することで、イーサネットインタフェースをアップグレードすることなく、利用可能な帯域幅を向上させて、耐障害性を高めることができます。

イーサチャネルはCisco独自の用語です。一般的にはリンクアグリゲーション(Link Aggregation : LAG)と呼んでいます。

イーサチャネルを利用しないと・・・

単純にスイッチ間を複数のリンクで接続しただけでは、耐障害性を高められるものの結局は1つのリンクだけしか使わずに通信の高速化は期待できません。スパニングツリーによってブロックされてしまうからです。以下の図の2台のスイッチを2本のリンクで接続した場合を考えます。

図 2台のスイッチを単純に2本のリンクで接続した場合
図 2台のスイッチを単純に2本のリンクで接続した場合

SW1のブリッジIDが小さければ、SW1がルートブリッジになります。SW1 ポート1、ポート2は代表ポートです。SW2では、ポート1かポート2がルートポートになります。SW2のルートポートの選出は、パスコストやブリッジIDでは決まりません。SW1が送信するコンフィグレーションBPDUをSW2が受信すると、ルートパスコストは同じです。ブリッジIDも同じになってしまいます。そこで、受信したコンフィグレーションBPDUのポートIDによってルートポートを選出します。SW2 ポート1で受信するコンフィグレーションBPDUのポートIDの方が小さくなるので、SW2 ポート1がルートポートです。残ったSW2 ポート2がブロッキング状態になります。2本のリンクで接続したとしても、イーサネットフレームの転送に利用できるのは1本のリンクだけです。2本だけでなく、3本、4本のリンクで接続しても同じです。


イーサチャネルの利用

イーサチャネルを利用すれば、正常時に複数のリンクで負荷分散させることができます。そして、1本のリンクに障害が発生しても、残りのリンクでイーサネットフレームの転送を継続できます。

イーサチャネルの設定を行うと、スイッチ内部に複数の物理ポートをまとめた仮想的なポートを作成すると考えるとわかりやすくなるでしょう。スイッチ内部のイーサチャネルによって作られた仮想的なポートと物理的なポートを対応づけることで複数のポートをグループ化します。次の図がイーサチャネルの例です。

図 イーサチャネルの例
図 イーサチャネルの例

この図では、2つのスイッチSW1とSW2を2本のギガビットイーサネットのリンク(1Gbps)で接続しています。それぞれのスイッチでイーサチャネルの設定を行うことで、仮想的なポートを作成して2つの1Gbpsのポートをグループ化します。これにより、実質的にSW1とSW2は、2Gbpsの1つのリンクで接続されているかのように扱うことができます。

イーサチャネルのモード(PAgP/LACP)

イーサチャネルは、片方のスイッチだけで設定しても意味がありません。当然ながら、両方のスイッチで正しく設定しなければいけません。そこで、両方のスイッチで効率よくイーサチャネルの設定を行うためのプロトコルがPAgP(Port Aggregation Protocol)およびLACP(Link Aggregation Control Protocol)です。PAgPはCisco独自のプロトコルです。LACPは、IEEE802.3adとして標準化されています。PAgPまたはLACPによって対向のスイッチ間でネゴシエーションを行うことで、イーサチャネルを正常に機能させることができます。

PAgP、LACPには、次の表のような動作モードがあります。

プロトコル動作モード説明
PAgP desirable PAgPによってEtherChannelを構成するようにネゴシエーションを開始します。
  auto 対向からPAgPによってEtherChannelを構成するようにネゴシエーションを受けるとそれに応答します。
LACP active LACPによってEtherChannelを構成するようにネゴシエーションを開始します。
  passive 対向からLACPによってEtherChannelを構成するようにネゴシエーションを受けるとそれに応答します。
表 イーサチャネルのモード

イーサチャネルのネゴシエーションは、対向のスイッチ同士で同じプロトコルを使わなければいけません。PAgPの場合は両端のスイッチのうちどちらかがdesirableのモードである必要があります。両方ともautoのモードであれば、イーサチャネルを構成することはできません。同様にLACPを利用する場合は、両端のスイッチのうちどちらかがactiveのモードでなければいけません。

PAgPやLACPによる対向スイッチ間のネゴシエーションを行わずに、静的なイーサチャネルの設定を行うことも可能です。その場合は、対向のスイッチ同士で正しくイーサチャネルの設定ができていることをしっかりと確認するようにしてください。対向のスイッチ同士のイーサチャネルの設定が正しくなければ、イーサネットフレームがループしてしまう危険性があります。

レイヤ2スイッチの仕組み