ダイナミックなRPの設定

PIM-SMにおけるRPの設定方法は次の2通りあります。

  • スタティック
  • ダイナミック

スタティックにRPを設定するには、マルチキャストルータすべてで利用するマルチキャストグループに対して同じRPアドレスを設定しなければいけません。そのため、スタティックでのRP設定は、大規模な環境ではRPアドレスの一貫性を保つことが難しくなります。設定が間違えていたり漏れていたりなどRPアドレスの一貫性が保てないと、正しくマルチキャストパケットをルーティングできなくなる可能性があります。

大規模な環境でもRPアドレスの設定の一貫性を容易に保つために、ダイナミックなRPアドレスの設定があります。ダイナミックなRPアドレスの設定として、以下の2通りあります。

  • Auto RP
  • BSR

Auto RPはCisco独自のプロトコルで、BSRは標準化されています。2つのプロトコルの動作の仕組みはよく似ています。

RPにしたいルータをRP候補として設定します。RP候補のルータは、自身が特定のマルチキャストグループのRPになることをアドバタイズします。この情報をAuto RPではMA(Mapping Agent)と呼ばれるルータが集めます。BSRではBSRルータが集めます。MAやBSRで集めたRPの情報をマルチキャストルータ全体にアドバタイズするという仕組みです。

図 Auto RPとBSRの概要
図 Auto RPとBSRの概要

Auto RPとBSRの違いは、複数のRP候補が存在する場合のRPの選出や情報のアドバタイズ方法が異なります。複数のRP候補が存在する場合、Auto RPではMAが最適なRPを決定して、その情報をマルチキャストルータにアドバタイズします。一方、BSRでは複数のRP候補の情報をそのままマルチキャストルータにアドバタイズし、各マルチキャストルータで最適なRPを決定します。RPの決定方法は同じアルゴリズムによるので、すべてのルータで同じRPが選ばれます。

また、情報のアドバタイズには次のようなアドレスを利用します。

  • Auto RP
    RP候補からMA:224.0.1.39
    MAからマルチキャストルータ:224.0.1.40
    Ciscoルータはデフォルトで224.0.1.40のマルチキャストグループに参加しています。
  • BSR
    RP候補からBSR:BSRのユニキャストアドレス
    BSRからマルチキャストルータ:224.0.0.13 PIMv2リンクローカルマルチキャスト

Auto RPはRPの情報をアドバタイズするために224.0.1.39、224.0.1.40というマルチキャストアドレスを利用しています。RPの情報がなくても224.0.1.39、224.0.1.40のルーティングを行うために、Sparse-Denseモードの利用が前提です。BSRはユニキャストおよびリンクローカルマルチキャストアドレスを利用するのでSparseモードで動作します。

ダイナミックなRPの設定コマンド

Auto RPの設定は次のコマンドでRP候補、MAとして動作するルータを決めればよいです。

Auto RP RP候補

(config)#ip pim send-rp-announce <interface> scope <ttl> [group-list <ACL>]

<interface> : RPアドレスとしてアドバタイズするインタフェース
<ttl> : RP AnnounceメッセージのTTL値
<ACL> : RPとするマルチキャストグループを特定するためのACL番号

Auto RP MA

(config)#ip pim send-rp-discovery <interface> scope <ttl>

<interface> : マッピングエージェントとして動作するインタフェース
<ttl> : RP DiscoveryメッセージのTTL

BSRの設定は、次のコマンドでRP候補、BSRとして動作するルータを決めます。

BSR RP候補

(config)#ip pim rp-candidate <interface> group-list <ACL>

<interface> : RPアドレスとしてアドバタイズするインタフェース
<ACL> : RPとするマルチキャストグループを特定するためのACL番号

BSR

(config)#ip pim bsr-candidate <interface>

<interface> : BSRとして動作するインタフェース

IPマルチキャストの仕組み