目次
ルータで行うIGMPレポートのフィルタ
レシーバは、マルチキャストグループのレシーバであることをラストホップルータに表明するためにIGMPレポートを送信します。デフォルトで、マルチキャストルーティングを行っているルータはすべてのIGMPレポートを受け入れます。
ip igmp access-groupコマンドによって、ルータは特定のマルチキャストグループのIGMPレポートのみを受け入れるようにすることができます。特定のマルチキャストグループのIGMPレポートを拒否すれば、レシーバにマルチキャストパケットをルーティングしないようになります。
ip igmp access-groupコマンドの構文は、次の通りです。
(config-if)#ip igmp access-group <ACL>
<ACL> : IGMPレポートのマルチキャストグループを指定するアクセスリスト
たとえば、FastEthernet0/0のインタフェースで、239.1.1.1のIGMPレポートのみを受け入れるようにするための設定例は次のようになります。
ip igmp access-group 設定例
interface FastEthernet0/0 ip igmp access-group 1 access-list 1 permit 239.1.1.1
また、IGMPv3では、マルチキャストグループだけでなくソースのアドレスも指定してレポートを送信します。IGMPv3のソースとマルチキャストグループのIGMPレポートをフィルタするためには、ip igmp access-groupで拡張アクセスリストを使います。拡張アクセスリストの前半部分がソースのアドレスの指定です。そして、後半部分がマルチキャストグループの指定です。
たとえば、FastEthernet0/0のインタフェースでソース192.168.1.1、グループ239.1.1.1に対するIGMPレポートのみを受け入れるための設定は次のようになります。
ip igmp access-group 設定例(拡張アクセスリスト)
interface FastEthernet0/0 ip igmp access-group 100 access-list 100 permit igmp host 192.168.1.1 host 239.1.1.1
スイッチで行うIGMPレポートのフィルタ
上記のようなIGMPレポートのフィルタをルータではなくスイッチで行うこともできます。設定の手順は次の通りです。
- IGMPプロファイルでpermit/denyするマルチキャストグループを指定
- IGMPプロファイルをスイッチポートに適用
IGMPプロファイルの設定は次のように行います。
(config)#ip igmp profile < profile-number >
(config-igmp-profile)# {permit|deny}
(config-igmp-profile)# range < start-group-address > < end-group-address >
< profile-number > : IGMPプロファイル番号
< start-group-address > : マルチキャストグループ範囲の開始アドレス
< end-group-address > : マルチキャストグループ範囲の終了アドレス
そして、作成したIGMPプロファイルをスイッチポートに適用します。IGMPプロファイルを適用するためのコマンドは次の通りです。
(config-if)#ip igmp filter < profile-number >
< profile-number > : 適用するIGMPプロファイル番号
ip igmp filterには、適用方向の指定はありません。適用したインタフェースでIGMPレポートを受信すると、IGMPプロファイルにしたがってIGMPレポートをpermit/denyします。
なお、物理的なスイッチポートのみにIGMPプロファイルを適用できます。ルーテッドポート/SVIのレイヤ3ポートおよびEtherChannelのChannel-groupにはIGMPプロファイルを適用できません。
たとえば、スイッチのFastEthernet0/1で239.1.1.1~239.1.1.255のIGMPレポートのみをpermitするための設定例は、次のようになります。
IGMPプロファイル設定例
ip igmp profile 1 permit range 239.1.1.1 239.1.1.255 interface FastEthernet0/1 ip igmp filter 1
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