概要

ルーティングテーブルにルート情報を登録するためにスタティックルート(スタティックルーティング)またはルーティングプロトコル(ダイナミックルーティング)を利用できます。スタティックルーティングとダイナミックルーティングの設定の考え方の違いについて解説します。

どちらを使う?

リモートネットワークのルート情報をルーティングテーブルに登録するには、スタティックルートかルーティングプロトコルを利用するダイナミックルーティングの2通りあります。どちらが優れていて、必ずどちらかを使うわけではなく、状況に応じて組み合わせます。ここでは、「どんな風に考えて設定するか」という観点で2つの方法について見てみましょう。

スタティックルートおよびルーティングプロトコル(ダイナミック)の設定の違いのポイントは以下です。

ポイント

  • スタティックルートを設定するときには、最終的なルーティングテーブルの状態がわかっていなければいけません。
  • ルーティングプロトコルを設定するときには、それぞれのルータのインタフェースだけわかっていればOKです。

このポイントについて、以下の簡単なネットワーク構成で考えてみましょう。

R1、R2、R3の3台のルータで4つのネットワークを相互接続しているというとてもシンプルなネットワーク構成です。各ルータのインタフェースにIPアドレスを設定して、直接接続のルート情報が登録されている状態としています。

ネットワークの構成例
ネットワークの構成例

最終的にはR1、R2、R3のルーティングテーブルに192.168.1.0/24、192.168.12.0/24、192.168.23.0/24、192.168.3.0/24のすべてのルート情報がルーティングテーブルに登録されるようにしなければいけません。

スタティックルートの場合

スタティックルートを利用する場合、それぞれのルータにとってのリモートネットワークのルート情報をコマンド入力やGUIベースの設定で、管理者が手動でルーティングテーブルに登録します。そこで、まずは、各ルータのリモートネットワークをきちんと把握しておかなければいけません。つまり、スタティックルートの設定を行うためには、各ルータのルーティングテーブルの完成形がわかっていなければいけません。

各ルータのリモートネットワークと指定するべきネクストホップアドレスをまとめると、次の表のようになります。

ルータリモートネットワークネクストホップ
R1192.168.23.0/24192.168.12.2
192.168.3.0/24192.168.12.2
R2192.168.1.0/24192.168.12.1
192.168.3.0/24192.168.23.3
R3192.168.1.0/24192.168.23.2
192.168.12.0/24192.168.23.2

リモートネットワークを把握したら、各ルータで管理者がコマンドラインからコマンドを入力したり、GUIの設定画面でスタティックルートのパラメータの指定を行って、リモートネットワークの情報を手作業で登録します。

スタティックルートの設定例
図 スタティックルートの設定例

この例のような小規模なネットワークであればそれほど設定の負荷は大きくありませんが、ルータの台数が増え、ネットワークの数も増えてくるとスタティックルートの設定は大変な作業です。

ルーティングプロトコル(RIP)の場合

ルーティングプロトコルの設定例を考えるにあたって、一番シンプルなRIPを利用するものとします。設定は、各ルータのすべてのインタフェースでRIPを有効化するだけです。特にリモートネットワークを洗い出して、ネクストホップを考えるような作業はいりません。設定するだけなら、各ルータのルーティングテーブルが最終的にどのようになるかを知らなくても大丈夫です。

ただし、ルーティングプロトコルを使うときにも、リモートネットワークとネクストホップを認識してルーティングテーブルの最終形をわかっておくことは重要です。そうでないと、出来上がったルーティングテーブルが正しいかどうか判断できません。ルーティングプロトコルを設定するときにリモートネットワークとそのネクストホップの情報は特にいらないという意味です。

RIP以外のルーティングプロトコルも基本的な設定は同じです。ルーティングプロトコルをすべてのインタフェースで有効化するという設定を行うだけです。ただ、BGPは例外です。BGPの設定はインタフェース単位ではありません。

RIPを有効化すると、各ルータはRIPのルート情報を送受信します。R1であれば、R2へ192.168.1.0/24のRIPルート情報を送信します。それを受信したR2はルーティングテーブルに192.168.1.0/24を登録します。また、R2からR3へ192.168.1.0/24と192.168.12.0/24のRIPルート情報を送信します。R3は受信したRIPルート情報をルーティングテーブルに追加します。

R3からはR2へ192.168.3.0/24のRIPルート情報を送信しています。R2はルーティングテーブルに192.168.3.0/24を追加します。また、R2からR1へ192.168.3.0/24と192.168.23.0/24のRIPルート情報を送信しています。すると、R1のルーティングテーブルに192.168.3.0/24と192.168.23.0/24が登録されます。

RIPの設定例
図 RIPの設定例

以上のように、各ルータで「すべてのインタフェースにおいてRIPを有効にする」という設定をすれば、あとはルータ同士がルート情報を交換して自動的にルーティングテーブルを作ってくれるようになります。

まとめと関連記事

ポイント

  • スタティックルートを設定するときには、最終的なルーティングテーブルの状態がわかっていなければいけません。
  • ルーティングプロトコルを設定するときには、それぞれのルータのインタフェースだけわかっていればOKです。

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Ciscoルータでのスタティックルートの設定コマンドは以下の記事で詳しく解説しています。

CiscoルータでのRIPの設定コマンドについて、以下の記事で詳しく解説しています。

このページの内容の具体的な設定例を以下の記事で解説しています。

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