目次
概要
「IPルーティング基礎演習Part1」から新しいルータR3を追加して、新規のネットワーク192.168.3.0/24を追加します。
スタティックルートを利用するときに、ネットワーク構成が変わった場合にどのように考えて設定するかがポイントです。
ネットワーク構成
設定条件
- R3のIPアドレスは、R1とR2と同様のポリシーで以下のように設定します。
ルータ | インタフェース | IPアドレス |
R3 | FastEthernet0/0 | 192.168.3.254/24 |
FastEthernet0/1 | 192.168.0.3/24 |
- 新しく追加したネットワークも含めて通信できるように適切なスタティックルートの設定を行います。
初期設定
R1/R2
R1 初期設定
interface FastEthernet0/0 ip address 192.168.1.254 255.255.255.0 no shutdown ! interface FastEthernet0/1 ip address 192.168.0.1 255.255.255.0 no shutdown ! ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 192.168.0.2
R2 初期設定
interface FastEthernet0/0 ip address 192.168.2.254 255.255.255.0 no shutdown ! interface FastEthernet0/1 ip address 192.168.0.2 255.255.255.0 no shutdown ! ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 192.168.0.1
PC1/PC2/PC3
- IPアドレス/サブネットマスク
- デフォルトゲートウェイのIPアドレス
設定と確認
Step1:R3 IPアドレスの設定
新しく追加したR3のインタフェースにIPアドレスを設定します。これにより、新しく192.168.3.0/24のネットワークと既存の192.168.0.0/24のネットワークをR3で相互接続します。
R3 IPアドレスの設定
interface FastEthernet0/0 ip address 192.168.3.254 255.255.255.0 no shutdown ! interface FastEthernet0/1 ip address 192.168.0.3 255.255.255.0 no shutdown
Step2:R3 スタティックルートの設定
新しく追加したR3にスタティックルートでリモートネットワークのルート情報を登録します。R3にとってのリモートネットワークは、以下の表です。
ルータ | リモートネットワーク | ネクストホップ |
R3 | 192.168.1.0/24 | 192.168.0.1(R1) |
192.168.2.0/24 | 192.168.0.2(R2) |
R3 スタティックルートの設定
ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 192.168.0.1 ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 192.168.0.2
Step3:R3 ルーティングテーブルと通信の確認
新しく追加したR3のルーティングテーブルを確認します。
R3 show ip route
R3#show ip route Codes: C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2 E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2 i - IS-IS, su - IS-IS summary, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2 ia - IS-IS inter area, * - candidate default, U - per-user static route o - ODR, P - periodic downloaded static route Gateway of last resort is not set C 192.168.0.0/24 is directly connected, FastEthernet0/1 S 192.168.1.0/24 [1/0] via 192.168.0.1 S 192.168.2.0/24 [1/0] via 192.168.0.2 C 192.168.3.0/24 is directly connected, FastEthernet0/0
R3のルーティングテーブルに直接接続のネットワーク192.168.0.0/24および192.168.3.0/24とスタティックルートのネットワーク192.168.1.0/24および192.168.2.0/24が登録されています。R3のルーティングテーブルには、必要なルート情報がすべて登録されています。
R3のルーティングテーブルが完成したので、PC3から通信を確認します。PC3からPC1へPingを実行します。
PC3からPC1へPing
PC3> ping 192.168.1.100 192.168.1.100 icmp_seq=1 timeout 192.168.1.100 icmp_seq=2 timeout 192.168.1.100 icmp_seq=3 timeout 192.168.1.100 icmp_seq=4 timeout 192.168.1.100 icmp_seq=5 timeout
PC3からPC2宛てのPingも同様です。R3のルーティングテーブルが完成しているのに、その配下のネットワークのPC3からのPingは失敗します。
Step4:R1/R2 スタティックルートの追加
PC3からPC1/PC2宛てのPingが失敗するのは、返事が返ってこられないからです。「通信は双方向」ということを忘れないようにしてください。
PC3からPC1宛てのPingリクエストは、R3からR1へ転送されています。しかし、その返事のPingリプライがR1で破棄されてしまいます。Pingリプライの宛先はPC3の192.168.3.100ですが、R1のルーティングテーブルには192.168.3.0/24のルート情報がないからです。
PC3からPC2宛てのPingも同様です。
新しく追加したR3だけにスタティックルートの設定をしても不十分です。既存のR1/R2にもスタティックルートの追加が必要です。R1/R2には、新しく追加された192.168.3.0/24のスタティックルートを追加します。
ルータ | リモートネットワーク | ネクストホップ |
R1 | 192.168.3.0/24 | 192.168.0.3(R3) |
R2 | 192.168.3.0/24 | 192.168.0.3(R3) |
R1/R2 スタティックルートの追加
ip route 192.168.3.0 255.255.255.0 192.168.0.3
Step5:通信確認
既存のR1/R2にも正しくスタティックルートを追加することで、すべての機器間で通信できるようになります。PC3からPC1およびPC2宛てのPingが成功するようになります。
PC3 通信確認
PC3> ping 192.168.1.100 84 bytes from 192.168.1.100 icmp_seq=1 ttl=62 time=60.300 ms 84 bytes from 192.168.1.100 icmp_seq=2 ttl=62 time=60.552 ms 84 bytes from 192.168.1.100 icmp_seq=3 ttl=62 time=60.675 ms 84 bytes from 192.168.1.100 icmp_seq=4 ttl=62 time=61.399 ms 84 bytes from 192.168.1.100 icmp_seq=5 ttl=62 time=60.732 ms PC3> ping 192.168.2.100 84 bytes from 192.168.2.100 icmp_seq=1 ttl=62 time=61.272 ms 84 bytes from 192.168.2.100 icmp_seq=2 ttl=62 time=60.878 ms 84 bytes from 192.168.2.100 icmp_seq=3 ttl=62 time=60.610 ms 84 bytes from 192.168.2.100 icmp_seq=4 ttl=62 time=61.657 ms 84 bytes from 192.168.2.100 icmp_seq=5 ttl=62 time=60.293 ms
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