RIPの特徴
RIP(Routing Information Protocol)は、最もシンプルな仕組みのルーティングプロトコルです。シンプルな仕組みなので、ルータでのRIPの設定なども簡単に行うことができ、運用の負荷が小さくなっています。その反面、さまざまな制約もあります。まず、RIPの特徴を簡単にまとめておくと、以下のようになります。
- IGPs
- ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコル
- メトリックとしてホップ数を採用
- 30秒ごとにルート情報を送信する
- ルーティングテーブルのコンバージェンス時間が長い
- ルーティングループが発生する可能性がある
- RIPv1とRIPv2の2つのバージョンがある
以下、それぞれの特徴について簡単に補足します。
IGPs
RIPは、企業の社内ネットワークなどで利用するIGPsの一種です。ホップ数の制限やコンバージェンス時間が長くなってしまうことから、主に小規模なネットワークでRIPを利用します。
ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコル
RIPの仕組みは、ディスタンスベクタ型です。ディスタンスは宛先ネットワークまでの距離を表すメトリックです。RIPの場合はホップ数です。そして、ベクタは方向で、ネクストホップとインタフェースが相当します。RIPでは、ネクストホップのルータから受信したルート情報のメトリックに基づいて最適なルートを決定します。以下の図は、距離と方向の簡単な例です。
R1は192.168.1.0/24のネットワークのルート情報をR2とR3から受信しています。R2から送信されたルート情報にはメトリック10が含まれていて、R1のインタフェース1で受信しています。R1から見ると、192.168.1.0/24のネットワークはインタフェース1のR2の方向で距離10だけ離れていることになります。同様にR3から送信された192.168.1.0/24のルート情報に含まれるメトリックは5で、R1はインタフェース2で受信します。つまり、R1から192.168.1.0/24のネットワークは、インタフェース2のR3の方向で距離5だけ離れています。
そして、R1が優先するのはR3から受信したルート情報です。メトリックは目的のネットワークまでの距離を表しているわけですが、距離は短いほうがよいです。メトリックが小さい方のルート情報を最適なルートとして扱います。
メトリックとしてホップ数を採用
メトリックとして、RIPではホップ数を採用しています。「ホップ」はルータを意味し、経由するルータの台数によって、目的のネットワークまでの距離を表しています。RIPのホップ数には上限があり最大15です。ホップ数16は距離が無限大で、そのネットワークに到達不能であることを意味しています。そのため、RIPはルータを16台以上経由することがあるような大規模なネットワーク構成で利用することができません。RIPが主に比較的小規模なネットワークで利用されている1つの理由がホップ数の制限です。
30秒ごとにルート情報を送信する
ルーティングプロトコルは、ネットワークの障害などのネットワーク構成の変化も検出します。RIPの場合は、定期的にルート情報を送信することで、送信しているルート情報のネットワークが正常に稼働していることを他のRIPルータに知らせています。デフォルトでは30秒ごとにルート情報を送信します。
RIPv1では、ブロードキャストでルート情報を送信します。一方、RIPv2ではマルチキャスト(224.0.0.9)でルート情報を送信します。RIPv2では、RIPに関係ない機器に余計な処理の負荷をかけることがありません。
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ルーティングテーブルのコンバージェンス時間が長い
基本的に、RIPでは30秒ごとの定期的なルート情報の送信を行っているので、たくさんのルータが存在すると、全体として必要なルート情報を学習するための時間が長くかかります。つまり、RIPではコンバージェンス時間が長くかかってしまいます。
ルーティングループが発生する可能性がある
ネットワークに障害が発生すると、できるだけすみやかに、障害が発生したネットワークのルート情報をルーティングテーブルから削除する必要があります。RIPでは、コンバージェンスが遅いので、ネットワーク障害のときに削除するべきルート情報が残ってしまうことがあります。ルーティングテーブルは、そのルータが認識しているネットワーク構成です。コンバージェンスが遅いため、ルーティングテーブルが実際のネットワーク構成とは異なり、パケットのルーティングを正しく行うことができず、ループしてしまう場合もあります。
小規模なネットワークであれば、コンバージェンスが遅いことはあまり問題ではありません。RIPが比較的小規模なネットワークで採用されている一つの理由です。
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ルーティングループを防止するための仕組みについて、以下の記事で解説しています。
RIPv1とRIPv2の2つのバージョンがある
RIPには、v1とv2の2つのバージョンがあります。現在では、v1を利用することはまずありません。ほとんどの場合、v2を利用します。v1とv2の主な違いをまとえたものが、次の表です。
バージョン | v1 | v2 |
ルート情報送信の宛先アドレス | ブロードキャスト | マルチキャスト(224.0.0.9) |
サブネットマスクの通知 | しない | する |
認証機能 | なし | あり |
集約 | 自動集約 | 自動集約/手動集約 |
なお、RIPv1とRIPv2には互換性がありません。パケットフォーマットはほとんど同じなのですが、互換性がないので必ずすべてのRIPルータでバージョンを合わせるようにしてください。前述のように、現在ではほとんどの場合、RIPv2を利用することになります。ただ、Ciscoルータはデフォルトではv1として動作してしまうので、明示的にv2にするように設定してください。
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