目次
ルーティングの原則
ルータやレイヤ3スイッチは、IPパケットをルーティングしてエンドツーエンドの通信を可能にしています。ルーティングするためには、ルーティングテーブルに必要なルート情報を登録しなければいけません。ルーティングテーブルはルータが認識しているネットワークの情報をまとめたもので、ルーティングテーブルに登録されていないネットワーク宛てのIPパケットは破棄されます。
「ルーティングテーブルに必要なルート情報をもれなく登録する」ということがルーティングを行うための前提条件です。
インターネットの概要
インターネットは、いろんな組織が運用するネットワークを相互接続しているものです。ネットワークを相互接続するのは、ルータまたはレイヤ3スイッチです。ルータやレイヤ3スイッチがインターネットの膨大な数のネットワークを相互接続しています。そして、それぞれのルータやレイヤ3スイッチが正しくルーティングテーブルに膨大な数のルート情報を登録しているので、私たちはインターネットの通信ができます。
膨大な数のルート情報ってどれぐらいあるのでしょう?
いくつかのISPがインターネット全体のルート情報を確認するためのLooking Glassのサービスを提供しています。Looking Glassのうち、AT&Tが運用しているルータでインターネットのルート情報を確認してみましょう。
インターネットのルート情報の確認手順
AT&TのLooking Glassサービスでインターネットのルート情報を確認するための手順は以下のとおりです。
- 「route-server.ip.att.net」へTelnet
- ユーザ名「rviews」 パスワード「rviews」でログイン
- ルーティングテーブルの表示
【「route-server.ip.att.net」へTelnet】
AT&Tの「route-server.ip.att.net」は、Telnetアクセスが可能です。Tera Termなどのターミナルソフトウェアから「route-server.ip.att.net」へTelnetします。
【 ID「rviews」 PW「rviews」でログイン】
Telnetでログインすると、以下のバナーメッセージが表示されます。
-------------- route-server.ip.att.net --------------- --------- AT&T IP Services Route Monitor ----------- The information available through route-server.ip.att.net is offered by AT&T's Internet engineering organization to the Internet community. This router maintains eBGP peerings with customer-facing routers throughout the AT&T IP Services Backbone: IPv4: IPv6: City: 12.122.124.12 2001:1890:ff:ffff:12:122:124:12 Atlanta, GA 12.122.124.67 2001:1890:ff:ffff:12:122:124:67 Cambridge, MA 12.122.127.66 2001:1890:ff:ffff:12:122:127:66 Chicago, IL 12.122.124.138 2001:1890:ff:ffff:12:122:124:138 Dallas, TX 12.122.83.238 2001:1890:ff:ffff:12:122:83:238 Denver, CO 12.122.120.7 2001:1890:ff:ffff:12:122:120:7 Fort Lauderdale, FL 12.122.125.6 2001:1890:ff:ffff:12:122:125:6 Los Angeles, CA 12.122.125.44 2001:1890:ff:ffff:12:122:125:44 New York, NY 12.122.125.106 2001:1890:ff:ffff:12:122:125:106 Philadelphia, PA 12.122.125.132 2001:1890:ff:ffff:12:122:125:132 Phoenix, AZ 12.122.125.165 2001:1890:ff:ffff:12:122:125:165 San Diego, CA 12.122.126.232 2001:1890:ff:ffff:12:122:126:232 San Francisco, CA 12.122.159.217 2001:1890:ff:ffff:12:122:159:217 San Jose, PR 12.122.125.224 2001:1890:ff:ffff:12:122:125:224 Seattle, WA 12.122.126.9 2001:1890:ff:ffff:12:122:126:9 St. Louis, MO 12.122.126.64 2001:1890:ff:ffff:12:122:126:64 Washington, DC *** Please Note: Ping and traceroute delay figures measured here are unreliable, due to the high CPU load experienced when complicated show commands are running. For questions about this route-server, send email to: [email protected] *** Log in with username 'rviews', password 'rviews' *** login:
このメッセージに表示されているようにユーザ名「rivews」、パスワード「rviews」でログイン可能です。
【ルーティングテーブルの表示】
2016年2月現在、「route-server.ip.att.net」はJuniperのルータです。
Juniperルータでルーティングテーブルを表示するためには show route table inet.0コマンドを利用します。コマンドを実行すると、以下のような出力です。
[email protected]> show route table inet.0 inet.0: 779548 destinations, 12471044 routes (779548 active, 0 holddown, 0 hidden) + = Active Route, - = Last Active, * = Both 0.0.0.0/0 *[Static/5] 10w5d 16:45:55 > to 12.0.1.1 via em0.0 1.0.0.0/24 *[BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.83.238 AS path: 7018 3356 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.120.7 AS path: 7018 3356 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.124.12 AS path: 7018 3356 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.124.67 AS path: 7018 6453 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.124.138 AS path: 7018 3356 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.125.6 AS path: 7018 6453 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.125.44 AS path: 7018 6453 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1d 01:00:14, localpref 100, from 12.122.125.106 AS path: 7018 2914 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.125.132 AS path: 7018 6453 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w4d 22:16:47, localpref 100, from 12.122.125.165 AS path: 7018 6453 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w5d 08:47:44, localpref 100, from 12.122.125.224 AS path: 7018 3356 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1d 01:24:35, localpref 100, from 12.122.126.9 AS path: 7018 3257 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1d 01:00:14, localpref 100, from 12.122.126.64 AS path: 7018 2914 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 6d 11:17:48, localpref 100, from 12.122.126.232 AS path: 7018 3356 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1d 01:24:35, localpref 100, from 12.122.127.66 AS path: 7018 3257 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 1w3d 03:25:28, localpref 100, from 12.122.159.217 AS path: 7018 3356 13335 I, validation-state: valid > to 12.0.1.1 via em0.0 1.0.4.0/22 *[BGP/170] 5d 20:59:47, localpref 100, from 12.122.83.238 AS path: 7018 1299 4826 38803 56203 I, validation-state: unknown > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 5d 20:59:13, localpref 100, from 12.122.120.7 AS path: 7018 1299 4826 38803 56203 I, validation-state: unknown > to 12.0.1.1 via em0.0 [BGP/170] 5d 20:59:20, localpref 100, from 12.122.124.12 ---(more)---[abort] ~以下、省略~
宛先のネットワークは「779548」個登録されていることがわかります。1つのネットワークに対して複数のルートがあるので、ルーティングテーブルに登録されているルートの総数としては「12471044」です。
このような膨大な数のネットワークのルート情報をインターネット上のルータがルーティングテーブルに登録していることがわかります。そして、これだけ膨大な数のルート情報をルーティングテーブルに登録するためのプロトコルがBGPです。
普段、インターネットを使っていろんな通信をしているとき、「経路上のルータやレイヤ3スイッチを管理している方々がきちんとルーティングテーブルを登録してくれてから通信できるんだ」ということをぜひ覚えておいてください。
IPルーティングのキホン
- ルータ ~ルーティングを行う中心的な機器~
- ルータでネットワークを分割
- レイヤ3スイッチ
- ルーティングの動作
- ルーティングテーブル
- ルーティングテーブルの作り方
- ホストルート ~/32のルート情報~
- スタティックルーティング?それともダイナミックルーティング? ~設定の考え方の違い~
- スタティックルーティングとダイナミックルーティング(RIP)の設定の比較
- スタティックルートのメリット・デメリット
- ルーティングプロトコルのメリット・デメリット
- ルート情報をアドバタイズする意味
- 宛先ネットワークまでの距離を計測 ~アドミニストレイティブディスタンスとメトリック~
- 等コストロードバランシング
- ルート集約 ~まとめてルーティングテーブルに登録しよう~
- デフォルトルート ~究極の集約ルート~
- 最長一致検索(ロンゲストマッチ) ~詳しいルート情報を優先する~
- インターネットのルート情報を見てみよう AT&T Looking Glass
- ルーティングプロトコルの分類 ~適用範囲~
- ルーティングプロトコルの分類 ~アルゴリズム~
- ルーティングプロトコルの分類 ~ネットワークアドレスの認識(クラスフルルーティングプロトコル/クラスレスルーティングプロトコル)~
- Cisco スタティックルートの設定
- ip default-network ~特定のルート情報に「*」をつける~
- スタティックルートをバックアップに ~フローティングスタティック~
- スタティックルートの設定を一歩ずつわかりやすく行う設定例[Cisco]
- Ciscoスタティックルーティングの設定例
- IPルーティング基礎演習Part1
- IPルーティング基礎演習Part2
- IPルーティング基礎演習Part3
- Windows PCのスタティックルートの設定 route addコマンド
- RIPの概要
- RIPの動作 ~RIPルート情報を定期的に送りつける~
- RIPスプリットホライズン
- RIPタイマ
- RIPルートポイズニング ~不要なルート情報を速やかに削除~
- Cisco RIPの設定と確認
- Cisco RIPの設定例
- RIPでのデフォルトルートの生成 ~スタティックルートの再配送~
- RIPでのデフォルトルートの生成 ~default-information originate~
- RIPでのデフォルトルートの生成 ~ip default-network~
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part1
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part2
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part3
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part4
- パッシブインタフェース(passive-interface) ~ルーティングプロトコルのパケット送信を止める~
- 転送経路を決定する方法 ~アドミニストレイティブディスタンス/メトリックと最長一致検索~
- デフォルトゲートウェイの詳細 ~ホストもルーティングしている~
- デフォルトゲートウェイの冗長化の概要
- Cisco HSRPの仕組み
- Cisco HSRP 仮想ルータ宛てのパケットがアクティブルータへ転送される仕組み
- Cisco HSRPトラッキング ~より柔軟にアクティブルータを切り替える~
- Cisco HSRP設定と確認
- Cisco HSRPの負荷分散
- HSRP 設定ミスの切り分けと修正 Part1
- VRRPの仕組み
- VRRPの設定と確認コマンド [Cisco]
- ルーティングテーブルのトラッキング(Cisco HSRP/VRRP)
- Cisco HSRP ルーティングテーブルのトラッキング設定例
- VRRP ルーティングテーブルのトラッキング設定例
- GLBPの仕組み
- Cisco GLBPの設定と確認
- Cisco GLBPの設定例
- HSRP/VRRP/GLBPのアドレス情報のまとめ