トラッキングとは

HSRPが有効なインタフェースの状態以外のネットワーク構成の変更に応じて、アクティブルータの切り替えを行う機能がトラッキングです。トラッキングは非常によく利用します。HSRPを利用しているときには、ほぼトラッキングの設定も行っているでしょう。

トラッキングが必要な例

HSRPは、ルータやレイヤ3スイッチのデフォルトゲートウェイとして動作するインタフェースだけを冗長化していることを思い出してください。アクティブルータの切り替えは、HSRPが有効なインタフェースの状態に基づいて行われることになります。

HSRPが有効なインタフェースだけでなく、その他のネットワーク構成の変更に応じてアクティブルータを切り替えたほうがよい場合もあります。たとえば、以下のネットワーク構成で、R1のFa0/1がダウンしたような場合です。HSRPが有効なインタフェースはR1 Fa0/0です。R1のFa0/1がダウンしたとしてもFa0/0からHSRP Helloを定期的に送信するので、アクティブルータの切り替わりは発生しません。

ですが、R1 Fa0/1がダウンすると、社内の他のネットワークやインターネットへパケットをルーティングすることができなくなってしまいます。

適切ではないアクティブルータになる場合 その1
図 適切ではないアクティブルータになる場合 その1

ルーティングプロトコルの設定次第では、R1 Fa0/1がダウンした場合、R1からR2へパケットをルーティングすることもあります。

適切ではないアクティブルータになる場合 その2
図 適切ではないアクティブルータになる場合 その2

いずれにせよ、R1はアクティブルータとしてPCからのパケットをルーティングするのには相応しくありません。R1 Fa0/1がダウンしたらR2がアクティブになったほうがよいです。そこで、トラッキングを利用します。

トラッキングの仕組み

HSRPで利用できるトラッキングは以下の2つです。

  • インタフェーストラッキング
    ローカルインタフェースの状態を監視して、アクティブルータの切り替えを行う
  • 拡張オブジェクトトラッキング
    特定のIPアドレスの接続性やルーティングテーブルなどの状態を監視して、アクティブルータの切り替えを行う

インタフェーストラッキングがシンプルなトラッキングの機能で、より高度な制御を行うのが拡張オブジェクトトラッキングです。どちらも監視対象の状態がダウンすると、プライオリティ値を下げることでアクティブルータの切り替えを行います。

なお、トラッキングを利用してアクティブルータを切り替えるには、プリエンプト(preempt)が有効になっていることが前提です。プリエンプトは「割り込み」という意味で、プリエンプトが有効であればプライオリティ値だけでアクティブルータを決定します。HSRPのデフォルトはプリエンプトが無効化されています。すでにアクティブルータが存在していれば、そのアクティブルータを使い続けて、あとからプライオリティが大きいルータが現れてもアクティブルータを切り替えません。

トラッキングによって、現在のアクティブルータのプライオリティが下げられてそれまでのスタンバイルータのプライオリティが相対的に大きくなります。しかし、プリエンプトが無効だと、アクティブルータの切り替えが行われなくなってしまいます。トラッキングを利用するときにはプリエンプトを有効化することを忘れないでください。

トラッキングによるアクティブルータの切り替え
図 トラッキングによるアクティブルータの切り替え

現在のアクティブルータが低いプライオリティの場合、プリエンプトが有効だとHSRP Coupメッセージを送信してアクティブルータの役割を取り上げようとします。

ルーティングテーブルのルート情報を監視する拡張オブジェクトトラッキングについて、以下の記事で詳しく解説しています。


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